2022年10月7日「決算特別委員会」
総括質疑・環境部、農政部
「特定外来生物・ツマアカスズメバチ対策強化について」

 民主県政クラブ県議団の原中まさしであります。発言通告に従い、「特定外来生物・ツマアカスズメバチ対策強化について」質問致します。

 質問に入る前に、今回、持ち込み資料として「ツマアカスズメバチを含むスズメバチ標本」を参考資料として、委員会回覧をさせて頂きたいと思います。

 あらかじめ、委員長に資料回覧の申し入れをしておりますので、委員長のお取り計らいをお願い致します。

 「ツマアカスズメバチ」については、本年4月28 日に福岡市東区、5月6日に糟屋郡久山町において、私有地内でスズメバチの個体、それぞれ1個体が発見され、専門家の同定の結果、いずれの個体も「ツマアカスズメバチ」の女王バチであることが確認されました。


 これを受け、5月19 日から6月6日にかけ、環境省九州地方環境事務所が緊急調査を実施した結果、久山町において「ツマアカスズメバチ」オスの1個体が確認されています。


 そのため、同事務所は久山町において、6月29日から7月15日にかけ、このオスバチの確認地点の周辺3km圏内の緑地、樹林地等、「ツマアカスズメバチ」の営巣の可能性がある場所に約300個のトラップを設置。また、同期間中、同様の範囲において個体及び巣の目視調査を併せて行いました。この追加調査の結果、新たな「ツマアカスズメバチ」の個体は確認されなかったとのことでした。


 しかし、その後の調査で、本年8月、久山町付近で新たに「ツマアカスズメバチ」が50匹以上確認されたという事です。


 さかのぼること7年前、2015年8月28日、「ツマアカスズメバチ」の巣が、北九州市門司区の下水処理場付近で見つかり、9月10日にその種が確認されたという事がありました。福岡県内で、初めて「ツマアカスズメバチ」の営巣が確認されました。


 この門司区での営巣の確認を受け、私はすぐに「ツマアカスズメバチ」駆除の最前線である対馬市を視察しました。その時、対馬市自然共生課の課長ならびに担当係長に現場を案内して頂き、詳しく話を聞かせて頂きました。そして、市井の昆虫学者の境先生からも「ツマアカスズメバチ」の生態など、詳しい話を聞かせて頂きました。

 
 そして、この対馬市の視察を踏まえ、2015年10月の「決算特別委員会」で質問したわけです。
 
 国内で最初の侵入地である対馬市では、侵略的外来種としてミツバチの捕食による養蜂業への影響、果樹・園芸への影響、生態系への影響、さらには市民への刺傷(ししょう)被害が起こっています。
 
 対馬市豊玉町で、私も実際に「ツマアカスズメバチ」の巣を見ましたが、胴回りは約150〜160cm、縦は1mほどの大きさで、これが通常の大きさということでした。それも、一匹の女王蜂でこれだけ大きな巣を作るということですから、驚きです。

 日本にいる在来種のキイロスズメバチの女王蜂1匹が産む卵の個数は、だいたい500個〜1,500個ですが、「ツマアカスズメバチ」の女王蜂は、1匹で、その10倍となる5,000個〜1万個の卵を産むといわれています。


 攻撃力や凶暴性、殺傷力では、在来のキイロスズメバチのほうが凶暴性は上ということですが、「ツマアカスズメバチ」のなにが脅威かといいますと、その驚異的な繁殖力にあります。

 
 そして、二つ目の脅威は、この「ツマアカスズメバチ」はミツバチを主食とするということです。したがって、「ツマアカスズメバチ」が福岡県内で定着し、生息域を拡大することになれば、養蜂業者や果樹・園芸農家の方々をはじめ、農作物の収穫にとって、とてつもなく大きなダメージになります。
 
 そこで、以上述べたところで、「ツマアカスズメバチ」対策に関し、まず環境部に質問いたします。

Q1.1点目に、本県として、「ツマアカスズメバチ」の脅威をどのように認識しているのか、お答えください。

 
  • 「ツマアカスズメバチ」は、非常に繁殖力が強いという特徴があり、加えて、生息域が広がるスピードも速く、急速に個体数が増加することから、生態系に大きな脅威を与えるおそれがあります。
  • 具体的な生態系への影響としては、在来のスズメバチをはじめ昆虫が捕食され、その数が減ってしまいます。
  • また、在来のスズメバチと同様に人が刺されて被害を受ける、けがをすることがあり、人への影響がございます。
  • さらに、ミツバチが捕食されることによる養蜂業への被害、またミツバチが受粉を行っております園芸農業への被害も懸念されるところであります。
 
Q2.私が2015年に議会質問して以降、「ツマアカスズメバチ」の脅威をどれくらい真剣に考え、環境部は、これまでどんな対策を講じてきたのか、お答えください。
 
  • 対策といたしましては、平成27年9月に、県内で初めて「ツマアカスズメバチ」が確認された直後、農林水産部をはじめ関係部局との間で連絡体制を整備し、毎年、活動が活発になる7月頃に、その発生状況や対応等について、情報を共有してまいりました。
  • 平成28年3月には、害虫駆除を行っている団体と協定を締結し、「ツマアカスズメバチ」と疑われる個体や巣を発見した場合は、県に情報提供をいただくこととしております。
  • また、県内市町村に対しましては、「ツマアカスズメバチ」が確認された際には、住民に対する注意喚起を行っていただくよう依頼しております。
  • 本年6月には、市町村職員を対象としまして「ツマアカスズメバチ」の生態や識別方法等に係る研修も実施したところでございます。県民の皆さんに対しては、「ツマアカスズメバチ」の特徴や見分け方、個体や巣を発見した場合の対応をHPに掲載するとともに、注意喚起の呼びかけを行っているところでございます。
 
Q3.本年4月の「ツマアカスズメバチ」の個体の確認後、現在までの状況をお答えください。
 
  • 委員の冒頭のご発言にもございましたけれども、本年4月に福岡市東区、5月に糟屋郡久山町において、それぞれ「ツマアカスズメバチ」の女王バチが発見されたことから、国が調査を行い、6月に久山町でオスバチ1匹が発見されました。
  • また、8月には九州大学も同地域で調査を実施しており、その結果、久山町及び篠栗町の計6箇所において、多くの「ツマアカスズメバチ」が発見されたところでございます。
  • この結果を受け、9月には、国が再度調査を実施し、福岡市東区、久山町及び篠栗町において、約30匹が発見されたところでございます。
  • 九州大学も同時に調査を実施しておりまして、福岡市東区において1個の巣が発見されており、発見された巣は、国により撤去される予定でございます。
  • なお、「ツマアカスズメバチ」や、その巣の発見等については、市町村に情報提供を行っております。
  • 国は、今後も巣の探索を継続し、巣が発見された場合には撤去すると聞いているところでございます。
 
Q4.「ツマアカスズメバチ」の繁殖力、生息域拡大のスピードを考えた場合、昆虫学者などの専門家や県内自治体の担当者を交えた協議をしっかり行うべきだと思いますが、この点についてどのような対応を取っているのか、お聞きします。
 
  • 防除に係る協議については、国が平成27年7月に、ツマアカスズメバチ防除計画を策定するため、九州地方環境事務所、長崎県、対馬市、昆虫を専門としている学識経験者等で構成する対策検討会議を設置しております。
  • 本県も平成27年11月から参加しているところでございます。
  • 防除計画策定以降は、国が、「ツマアカスズメバチ防除に係る意見交換会」を毎年開催し、「ツマアカスズメバチ」の防除や侵入状況に係る情報共有や意見交換を行っております。
  • この意見交換会には、九州地方環境事務所、九州山口各県、政令市及び関係市、昆虫を専門としている学識経験者等が参加しております。
 
Q5.特定外来生物の防除の責務を負っている国は、関係団体に委託して調査・防除を行う「特定外来生物防除等推進事業」を実施していると聞いています。
 そこで、環境部としては今後、どのような取り組みを進めていくのか、また、県民への周知・啓発についても、併せてお答えください。
 
  • 「ツマアカスズメバチ」の防除については、国がその責務を担うことから、国が調査や防除を実施する際には、県も、引き続き、連携・協力してまいります。
  • また、市町村及び倉庫業や運送業など事業者団体等への周知や注意喚起も引き続き、しっかり行ってまいります。
  • 県民の皆さんに対しましては、先ほど答弁しましたとおり、「ツマアカスズメバチ」の特徴などの周知や注意喚起を行っており、今後も、わかりやすく、迅速な情報の提供と注意喚起に努めてまいります。
  • 具体的な対応にあたっては、農林水産部をはじめ、関係部局としっかり連携をして取り組んでまいります。
 
 ブラックバスやカミツキガメ、マングース。県内でも定着が危惧されているセアカゴケグモ、ヒアリなど、日本の生態系に大きな影響を与えるであろうと思われる「特定外来生物」は増えています。

 迅速な対応策をとらなければこれらの危険は、遅かれ早かれ対馬市ばかりでなく、福岡県内、日本列島全体に拡大する可能性が高いと言えます。環境部として、しっかり対応を要請します。

 次に、農政部にお聞きします。

 「ツマアカスズメバチ」の繁殖力の凄さは先ほども述べましたが、対馬市では、  当初は島の北部、上対馬のみでしたが、わずか1年ほどで島の南部にも巣が見られるようになっています。

 食性はほかのスズメバチ同様肉食で、幼虫のエサにするためにさまざまな昆虫への狩りを行います。ハエ・ミツバチ・トンボを捕獲することが多く、特にミツバチを好みます。

 対馬市の養蜂は、日本の在来種であるニホンミツバチを使った「蜂洞」という日本古来の養蜂業ですが、ミツバチをエサとする「ツマアカスズメバチ」によってニホンミツバチに甚大な被害が発生しています。ひとつの養蜂業者だけで年間、10以上の「蜂洞」(巣箱)が全滅させられたという報告もあります。

 本県も含め、日本の養蜂業の中心はセイヨウミツバチです。このセイヨウミツバチはニホンミツバチ以上に外敵に弱く、もしも「ツマアカスズメバチ」が国内に侵入・定着し、増加し続けた場合、セイヨウミツバチの多数がその餌食になると、専門家は警鐘を鳴らしています。

 そして各地でセイヨウミツバチが壊滅的な被害を受ければ、それを利用した受粉を行う農業作物が、多大な損害を受けることになります。 以上、申し述べ、以下、農林水産部に質問します。

Q1.2015(平成27)年9月に北九州市門司区で営巣が確認された後、農林水産部としてどのような対応を行ったのか、お聞きします。
 また、「ツマアカスズメバチ」の定着が確認されている対馬市に、農水部として職員を派遣したことはあるのか、お聞きします。
 
  • 平成27年9月の北九州市門司区での営巣の確認を受け、直ちに養蜂農家に注意喚起し、発見した時には早期に通報するよう指導しております。
  • その後、平成28年2月に専門家による研修会を開催するとともに、毎年、働きバチの活動が活発になる7月頃に、養蜂農家に対し、注意喚起をしているところです。
  • これまで、県では対馬市へ職員の派遣は行っていませんが、長崎県から情報を収集し、状況について適宜把握に努めているところです。
 
Q2.本年4月28日に福岡市東区、5月6日に糟屋郡久山町で「ツマアカスズメバチ」の個体が相次いで確認されました。その後、農林水産部としてどのような対応を行ったのか、お答えください。
 
  • 今回の県内での「ツマアカスズメバチ」の個体確認を受け、直ちに養蜂農家に情報提供し、注意を喚起したところです。
  • その後、県内養蜂農家に対し、随時、状況確認を行っておりますが、ミツバチに対する被害は、現在のところ確認されておりません。
  • 確認した情報については、環境部とも共有を図っており、引き続き連携してツマアカスズメバチ対策を行ってまいります。
 
Q3.先ほども環境部にお聞きしましたが、「ツマアカスズメバチ」が養蜂家や園芸農家に与える影響について、農林水産部ではどのような認識を持っているのか、お答えください。
 
  • このハチは、繁殖力が強く、移動範囲が広い、中型のスズメバチで、ミツバチの巣の周りで働きバチを襲うことから、県内に定着した場合、ミツバチの減少が懸念されると聞いております。
  • また、「ツマアカスズメバチ」が定着し、著しく数が増えた場合、養蜂業に影響を与えるだけでなく、ミツバチで受粉を行う「かき」や「なし」といった果樹や「いちご」に対しても影響があると考えております。
 
 受粉をミツバチに頼るこれらの野菜・フルーツは、ミツバチの数が大きく減少した場合、人の手による受粉作業となり、大変な作業、労務が必要になります。
 
 ミツバチによるものに比べるとはるかに効率が落ちる上、花ごとの受粉に偏りが生まれて、果実に奇形が生まれる確率が非常に高くなるといわれています。そうなれば、農業に対する経済被害もとても大きなものとなってしまいます。

Q4.そこで、本県として、「ツマアカスズメバチ」対策について、養蜂や園芸関係の団体との「対策会議」を行うべきだと考えますが、どう考えるかお考えください。
 
  • 今回の県内での個体確認を受け、園芸農家に対しても先ほど申し上げた注意喚起と発見時の対応について周知を図っているところです。
  • また、個体確認が急速に増えていることから、県内での定着も想定し、早期発見・早期防除の徹底や被害を軽減する技術の情報共有を図るため、県養蜂組合やJA部会等の園芸関係の団体との対策会議を環境部と連携して開催することとしております。
 
 いま農林水産部から答弁を頂きましたが、「ツマアカスズメバチ」が定着すると、養蜂業や果樹・園芸に大変な悪影響が出ると予測されます。農林水産部として、危機意識をもって「ツマアカスズメバチ」対策を進めて頂きますよう、強く要望します。

 今回の質問で、「ツマアカスズメバチ」が本県内に定着した場合、生態系のみならず、養蜂業や園芸関係、そして人間の生活環境にも影響が出ることが、改めて明らかになったところです。
 
Q10.そこで、最後に、今後の「ツマアカスズメバチ」への対応について環境部長の決意をお聞きします。
 
  •  「ツマアカスズメバチ」は、委員のご発言にもございましたとおり、強い繁殖力を持っておりまして、そしてその生息域拡大のスピードというのは非常に速いということから、生態系、農林業への影響が懸念されているところでございます。
  •  このことから、「ツマアカスズメバチ」の定着を防ぐ必要があり、そのためには、早期発見、早期防除が極めて大事でございます。
  •  先ほど、課長も答弁いたしましたとおり、国が今後も巣の探索を継続することとしておりまして、巣が発見された場合には撤去すると聞いております。
  •  県といたしましても、この国の調査・撤去が迅速に進むよう、しっかり協力してまいります。
  •  あわせて、県民や事業者の皆さんに対しても必要な情報をわかりやすく、そして迅速に提供するとともに、注意喚起を行ってまいります。
  •  加えて、環境部と農林水産部をはじめとする関係部局、そして関係団体のみなさんとも情報を共有するとともに、取組に当たっては、しっかり連携をしてまいります。
  •  今後とも、国や市町村、事業者の皆様などとの連携を密にし、早期発見、早期防除に取り組み、「ツマアカスズメバチ」が定着することがないよう、努めてまいります。